東京国立博物館では、およそ1,000点にのぼるアイヌ民族資料を保管しています。当館のみが保管する貴重な資料も含まれ、日本はもとより、世界的に見ても重要なコレクションとして関心が寄せられています。  当館のアイヌ資料は、明治初期から昭和初期にかけて蒐集されたもの、あるいは寄贈されたものから成っています。  資料の中核をなすのは、昭和2年10月に徳川頼貞氏から寄贈されたコレクションです。 頼貞氏は紀州徳川家の16代目当主であり、日本の考古遺物、染織品、古楽器などの蒐集家でもありました。ただし、頼貞氏寄贈のアイヌ民族資料は、二条基弘氏が主宰していた銅駄坊陳列館の資料が核となっており、明治30年代に北海道や樺太で集められたものが中心です。  当館の所有するもっとも古い資料は明治初期に集められたものです。明治6(1873)年、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の冶世25周年を記念してウィーン万国博覧会が開催されましたが、これに出品するために蒐集された資料が、博覧会後に当館に引き継がれました。  もっとも新しく寄贈された資料は、北海道出身の日本画家・平子聖龍氏が蒐集したコレクションです。アイヌを主題とした絵を多く描いた平子氏は、アイヌ風俗を描く際にこれらの民具を考証の資料としました。このコレクションは、数はそれほど多くはないものの、子供用の衣類や木偶など、貴重な資料が含まれています。聖龍氏の没後、妻・はつ氏によって平成元年、当館に寄贈されました。

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