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夕刊中外 1949年11月6日

副編集 国立博物館の問題の内情

髙橋誠一郎氏が空位だった国立博物館長の職を現職の日本藝術院長のまま任命することが決定された。博物館は政府運営の下、一般人に公開されるようになったが、内部では常に問題を抱えている。初代博物館長安倍能成は、しばしば博物館長の居心地の悪い役職から学習院院長へ戻りたいという意志を表明していた。上野直昭氏、現藝術大学学長は第2代館長に任命されたが、彼の指名に関してはひと悶着あった。上野氏は職に就くよう説得され引き受けたが、短期間で退職した。たとえ内部問題の本性が白日の元に晒されたとしても、それは博物館の時代遅れの建物を荒らすシロネズミ(総合職の裏切者)達による悪名高い権力闘争の露顕以外の何物でもない。

問題なのは、古美術界や「野だいこ」(ごますり)や公然と機嫌をとる学者たちを支配するボス達がいることである。博物館の問題もそこに起因している。また、各長官が率いる派閥争いも問題の一因である。博物館は古美術の購入や国の宝である神社や寺の修理に経費を使う。これらにおいて舞台裏では巧妙な策略が陰謀されているらしい。独特の文化を持つ日本の様な国にこのような舞台裏の不名誉は恥である。筆者はこのような目を背けたくなる不名誉な争いが起きている化け物の巣窟である博物館が、光輝く博物館として再生されることを願うばかりである。もちろん新館長高橋氏にも上に述べたことに思い当たる節はあるが、彼にはこの博物館の再生に努力してほしい。

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