研究概要・目的 Research Overview and Purpose

占領期の教育政策における国立博物館の役割に関する調査研究

第二次世界大戦後、日本はGHQ( General Headquarters, the Supreme Commander for the Allied Powers連合国軍最高指令官最高司令部)による占領統治が行われ大規模な民主化政策がすすめられ、皇国史観に基づく歴史教育と軍事的要素有りとみなされた修身の授業を停止し民主主義思想を主軸とした教育改革が行われた。帝室博物館も民主化政策の一端として所管を宮内省から文部省へ移し、国民のための社会教育機関として国立博物館となった。

また国立博物館初の子供向け教育普及事業に関する調査によって、国立博物館初代館長安倍能成がGHQと会合を重ねていたこと、国立博物館職員による欧米の博物館視察と国立博物館の教育事業にGHQが関与していたこと、歴史教育に関して博物館が学校より先行した教育機関であったことが判明した(『MUSEUM No.611』に発表)。

これらのことから国立博物館の設立にGHQが深く関わっていたことが考察される。
本研究は、GHQと国立博物館の関係を明らかにし、GHQの民主化政策における国立博物館の役割を検証することが目的である。

CIE文書のうち博物館関連文書翻訳データベース

GHQの占領政策研究において、GHQが保管していた原文書の解読分析は不可欠である。
これらの文書は一般的にGHQ/SCAP文書と呼ばれ、公文書及びGHQと日本政府、諸機関間で交わされた報告、協議、通達、記録である。GHQ/SCAP文書はGHQ廃止後、米国国立公文書館に移管され秘密扱いとされていたが1974年に秘密指定が解除された。日本の国立国会図書館が文書のマイクロフィルムを所蔵し、そのデータベースは国立国会図書館と複数の省庁と大学機関で閲覧することができる。

本研究では、国立国会図書館が資料選別のため付けた分類記号(十進分類)及び分類記号ごとの文書目録(荒敬、内海愛子、林博史『国立国会図書館所蔵 GHQ/SCAP文書目録』全11巻)を手がかりに、GHQの内部部局で教育・文化を担当したCIE(Civil Information & Education Division 民間情報教育局)に関する文書(以下CIE文書)およそ800点が研究対象とした。

目録にまとめられた文書タイトルは教育、ミュージアム、費用、週刊レポートなど同じものが複数あり日付のみや無題のものも含まれるため、内容を確認するには文書1枚1枚に目を通し、200点翻訳を行った。そのうち博物館に関連する文書約20点をデータベースに挙げた。

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