晴川院養信による模写事業
このページでは「東京国立博物館所蔵 木挽町狩野家関連 寺社宝物模本データベース」収録の資料のうち、狩野晴川院養信の主導のもと特定の機会に制作された模本をまとめて紹介します。
西国模写 (天保十一年)
養信は天保十一年に弟子・三村晴山、中山鍮次、糺晴岱、狩野藤太らを西国へ派遣し、京都や奈良周辺で模本制作をさせました。彼らは多数の模本を制作し、江戸の師匠のもとに送りました。模本に記された日付からは彼らの足取りを大まかにたどることが出来ます。
- A-6477 五祖像(二尊教院、三月二十八日、晴山養實)
- A-2438 片田景図(大徳寺瑞峯院、四月十七日、五月六日、糺晴岱養承、井上□)
- A-1749 十二類絵詞(三井新八、四月二十六日、狩野養長、三村晴山ほか)
- A-2418 十念寺縁起(十念寺、三月中旬、狩野養長、糺晴岱ほか)
- A-6482 大恵和尚図(大徳寺瑞峯院、五月、狩野養長)
- A-9263 円光大師像(二尊教院蔵、五月、三村晴山)
- A-1872 仏鬼軍絵巻(十念寺、三月二十八日、井上昆得、岩崎信盈ほか)
- A-2769 二尊院縁起(大徳寺瑞峯院、三月二十九日、糺晴岱、狩野養長)
- A-9259 後醍醐天皇影(大徳寺方丈、五月、中山養福)
- A-1750 二十五菩薩像(嵯峨二尊院、五月三~十三日、九月二十九日、狩野養長、岩崎信盈ほか)
- P-537-7 法隆寺什物図のうち「中院蔵八華形古鏡」(法隆寺、六月三十日、藤原養長)
- P-2213 紋錦旗抜写(法隆寺、夏日、養福)
- A-5992 春夜桃李園沈香亭図(知恩院、七月上旬、中山養福、糺晴岱)
- A-9207 後白河法皇影(知恩院、七月二十三日、三村晴山)
- A-1646 一遍上人絵伝(歓喜光寺、八月、三村晴山、中山養福ほか)
法隆寺出開帳 (天保十三年)
法隆寺は天保十三年に江戸の両国・回向院にて宝物の御開帳を執り行いました。これに際し養信は、御用の絵画制作などで参照するためとして模写を願い出で、弟子と共に百件以上の宝物の模本を制作しました。養信の優れた模写技術が御覧いただけます。
熱海湯治 (天保十四年)
養信は体調の悪化を理由に、天保十四年七月二十七日から九月一日にかけて熱海へ湯治に出かけます。その道中、鎌倉や藤沢、伊豆の寺社へ立ち寄り、随行した弟子と共に宝物を調査しています。太刀や手箱など工芸品の模写が多いのも特徴です。