論文等

汝窯への道―青磁の理想像を求めて―
The Path Towards Establishing the Ru Kiln - Searchin for the Ideal Celadon -

著者: 今井 敦(文化庁美術学芸課)

出版者: 聚美社

掲載誌,書籍: 聚美 22号

2017年 1月 20日 公開

関連研究員(当館): 今井 敦 

データ更新日2020-12-17

 汝窯は北宋時代末に宮中の御用品を焼いた窯として古来文献に名高い。汝窯の研究は、1930年代のデイヴィッド卿の業績、そして1980年代の宝豊清凉寺窯址の発見と2000年より行われた窯址の発掘調査により大きく進展した。一方、かつて小山冨士夫氏は、北宋時代に宮廷向けの青磁を焼いた窯として、「東窯」を提唱した。浮き彫りが施された水注や、淡色無文の碗など、「東窯」とされた青磁については、五代の黄堡窯(耀州窯)の発掘調査により多くの新知見が得られた。しかし、汝窯青磁が完成へと至る過程、すなわち北宋時代前期から中期にかけての官窯系の青磁の展開については、いまだ材料が不足しており、不明な点が多く、一時的な断絶を想定する研究者も存在する。唐時代の越窯の秘色青磁から、南宋官窯へと至る官窯青磁の一連の展開について、作品の検討、考古学の成果、高麗青磁との比較などを通して考察する。