論文等

「古九谷」と中国陶磁―日本における色絵磁器の模倣と創造―

著者: 今井 敦(東京国立博物館)

出版者: 青月社

掲載誌,書籍: 聚美 第5号

2012年 10月 1日 公開

関連研究員(当館): 今井 敦 

データ更新日2020-10-08

 日本の陶磁史は、技術と様式の両面で、つねに中国陶磁からの刺激を受けながら展開してきた。日本における最初期の色絵磁器である「古九谷」は、とくに同時代の中国の色絵磁器と密接な関係があったと考えられる。
 「古九谷」と呼ばれる色絵磁器のうち、祥瑞手については、明末期に景徳鎮民窯で焼かれた色絵祥瑞に倣っていることが明らかであろう。五彩手、青手については、交趾と呼ばれる三彩陶との関係が指摘されてきたが、基本的にはやはり同時代の中国の色絵磁器から影響を受けていると考えたい。明末清初期の景徳鎮民窯で焼かれた色絵磁器の編年研究は、制作時期が明らかな資料に恵まれないため、不明な点が多いと言わなければならないが、染付を併用しない点、上絵具を厚塗りする点、黒の上に緑釉を施す手法などはいわゆる康煕五彩に通じる要素とみることができる。それを力感あふれる独自の様式に仕上げたことは、創造的な和様化と評価することができるだろう。