口頭発表

中国・雲南の陶磁器について

学会,機関: 東洋陶磁学会平成10年度第12回研究会

発表者: 今井 敦(東京国立博物館)

1999年 2月 13日 発表

関連研究員(当館): 今井 敦 

データ更新日2021-12-10

 西田記念東洋陶磁史研究助成基金による「雲南陶磁の位相」の研究の中間報告である。雲南の陶磁器として玉渓窯の青花などが知られているが、その様相は未だ明らかではない。この地における青花の誕生の経緯やその年代についてもなお考究が必要である。また、雲南を介した中国と東南アジア地域との交流は古来盛んであり、東南アジア地域の陶磁器を考えるうえで、雲南の陶磁器との技術的、様式的関連は避けて通ることができない問題である。1997年秋に雲南中部と南部の資料、すなわち昆明、禄豊に保管されている資料と玉渓窯、建水窯の表面調査を行い、以下のような知見が得られた。
 ①雲南の元・明時代の陶磁器には青釉と青釉青花がある。青釉には龍泉窯青磁の影響がみられる。青釉青花は景徳鎮窯の青花の様式に倣っているが、釉や胎土は異なっており、釉は青釉のそれと変わるところがない。碗や皿は粘土塊を置いて重ね焼きしている。底裏に鉄銹を塗ったいわゆるチョコレートボトムの例がある。②雲南では長く火葬が行なわれており、完形の陶磁器の多くは火葬墓からの出土品である。火葬墓には墓誌が入れられることが少なく、また副葬品が乏しい。さらに、高地である雲南では層序による年代の把握ができない。このため、出土遺物の年代決定が困難である。③雲南で用いられているコバルト顔料はマンガンと鉄分が多いため、発色が黒ずんでいる。地元に産するコバルト顔料を用いている。④発掘調査がなされた窯址は玉渓窯のみである。玉渓窯の製品は必ずしも雲南の青釉、青釉青花の全貌をあらわしているとはいえない。建水窯はまだ発掘調査がなされていないが、十数箇所の窯よりなる大規模な窯場であった可能性がある。⑤出土品の年代は元、明のものがほとんどである。大理国時代の資料は雲南西部で出土しており、次回に調査を行なう予定である。⑥出土陶磁の内容は地域によって異なっており、現地の研究者は1.雲南南部、2.雲南西部、3.雲南中・東北部、4.禄豊地区に区分してとらえている。禄豊地区では火葬墓より百件余の質の優れた陶磁器が発見されている。これらは地元の禄豊白龍井窯・羅川窯の製品とは異なっており、未知の窯の存在が想定されている。
 今後、雲南西部の調査を行い、その成果に基づいて雲南陶磁の歴史的・地理的位相の把握を試みる予定である。