展示関連の研究実績

初期伊万里の粋―染付から初期色絵まで

学会,機関: 東京国立博物館

関連研究員: 今井 敦(東京国立博物館)

2023年5月16日~8月20日

関連研究員(当館): 横山 梓  今井 敦 

データ更新日2023-05-18

江戸時代初期、1610年代に肥前有田地域(現在の佐賀県)で生産がはじまった日本で初めての磁器は、伊万里港から運び出されたことから伊万里焼と呼ばれます。本特集では、伊万里焼のなかでも草創期からの染付を中心に、有田の窯場が1660年代に輸出陶磁生産に移行していく前までの初期の色絵磁器を含んだ一群を「初期伊万里」ととらえ、ご紹介します。
初期伊万里の特徴の一つとして、特に早い頃に制作された作例にみられる焼成後の器のひずみや、染付のにじみ、遠近法のゆがんだ画面構成といったものが挙げられます。こうした磁器草創期の技術的未熟さに由来した表現は、おおらかで味わい深さがあります。赤、黄、青、緑、黒といった上絵具による色絵磁器は1647年頃からつくられるようになり、初期の色絵は、豊かな色調で器面いっぱいに図様をあらわしています。初期伊万里の作例にはこのほかにも、成形面では型作りや糸切細工、装飾面では刻み文様や多色釉、金銀彩など、複数の技法を取り込み、試行錯誤しながら新しいものを生み出そうとしていた様相もうかがうことができます。
ここでは、近年のご寄贈等により新たに当館の所蔵品となった作品をはじめ、これまで展示する機会の少なかった作品もあわせてご紹介します。初期伊万里の多彩な表現をお楽しみください。